ハーモニック・ドライブ・システムズ(6324)のPERが251.2倍という数字、確かに通常の感覚からすると「異常な割高」に見えますね。ただ、この数字を読み解くには、同社が置かれている特異な状況を理解する必要があります。
結論から言うと、この200倍超というPERは**「利益がどん底の状態(分母が極端に小さい)」**から算出されているため、実態以上に高く見えている側面が強いです。
現状を整理して解説します。
1. なぜPERがこれほど高いのか?
PERは 株価 ÷ 1株当たり利益(EPS) で計算されます。
- 利益の急減: 同社は現在、半導体製造装置や産業用ロボット市場の調整局面により、利益が大きく落ち込んでいます。
- 分母の縮小: 2026年3月期の通期純利益予想は13億円程度(前期比でも大幅減)と、本来の稼ぐ力に比べて極めて低い水準です。
- 期待先行の株価: 利益は少ないものの、株価は将来の「ロボット・AIブーム」や「テスラのヒューマノイド(Optimus)への採用期待」を織り込んで一定の水準を維持しているため、割り算の結果としてPERが跳ね上がっています。
2. 「買われ過ぎ」かどうかを判断する視点
単純なPER 250倍だけを見て「買われ過ぎ」と断じるのは危険ですが、以下のポイントで判断が分かれます。
- 強気派の視点(回復期待): 「今はたまたま利益が出ていないだけ。次期以降に業績がV字回復すれば、実質的なPERは30〜40倍程度まで下がるはずだ」と考えます。同社は世界シェアトップの精密減速機を持っており、ヒューマノイドロボット市場が立ち上がれば爆発的な成長が見込めます。
- 弱気派の視点(割高感): 「回復期待を織り込みすぎている。同業のファナックやキーエンスと比較しても、現在の時価総額に見合う利益を出すには数年かかる」と考えます。実際、直近では業績予想の下方修正リスクも意識されています。
3. 他の指標との比較(2026年2月時点)
PERが機能しない局面では、売上高に対する時価総額の倍率(PSR)などが参考にされます。
| 指標 | 数値の傾向 | 解説 |
| PSR | 高め | 売上規模に対して時価総額が大きく、市場の期待値が高い。 |
| PBR | 4倍超 | 資産価値に対してもプレミアムが乗っている状態。 |
| 配当利回り | 0.6%前後 | インカムゲイン狙いの銘柄ではない。 |
まとめ:今は「期待」を買うフェーズ
現在の251.2倍というPERは、「現在の業績」ではなく「将来の支配的地位」に対するプレミアムです。
- 投資スタンス: 短期的な割安さを求めるなら手は出しにくいですが、数年後の「ロボット社会」のコアサプライヤーとしての大化けを信じるなら、この数字を無視して保有する投資家も多いのがこの銘柄の特徴です。
ただし、期待外れの決算が出た際の反落リスクは非常に大きいため、2月9日に予定されている第3四半期決算の内容(特に受注の回復状況)を注視することをお勧めします。
